赤瀬温泉Forever

塗りつぶされた「赤瀬温泉」

赤瀬温泉Forever

赤瀬温泉弁天閣は,石川県小松市の山中にひっそりと在った温泉宿である。地元民以外にはほとんど知られることもなく,それ故に近年の浅薄な温泉ブームに害されることのなかった,素朴で心休まる場所だった。私が赤瀬温泉に特別の思い入れを抱くことになった端緒については,「赤瀬温泉知名度100%キャンペーン」を参照されたい。

私はといえば,1997年を最後に,暫くの間赤瀬温泉を訪れる機会を得られなかった(大阪から比較的近いため,行こうと思いさえすれば何時でも行けるという油断があったのだ)。ところが2001年の夏頃,弁天閣に電話が繋がらなくなったが何か知らないかという問い合わせがあり,これをきっかけに改めて情報を収集したところ,再び赤瀬温泉に赴くチャンスは永遠に失われてしまったことが明らかになったのだ。私はそのことをごく短い文章に残した(「さよなら赤瀬温泉」)

しかしながら,それ自体まるで幻のようであった赤瀬温泉での日々を思い出すと,あの赤瀬温泉が無くなってしまったということもまた,現実のものとして感じられないのである。あるいは,いつも白い雪に覆われていた弁天閣の赤屋根や,その向こうに霞むダムの堰堤さえも,本当は存在しなかったのではないか,そんな疑念さえ湧き上がってくるのだ。結局のところ,この痛みから立ち直るためには,実際にこの目で見て確かめる以外に方法は無いように思われた。

今回そのチャンスに恵まれ,実際に赤瀬温泉を再訪することができたので,その記録をここに公開する。

2005年1月 なかはし記す

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