歪曲劇場

しっぽでごめんね / 白倉由美

連載が「コミック新現実」に移ってから読み損ねていて、ずっと続きが気になっていたのだけれど、ふと見ると、単行本が出ているじゃないか。

早速買ってきて読んでみると、冒頭から大幅な加筆がなされている。その他も色々な加筆・修正があるようだ。中にはクリティカルなものもあって、なんと「しっぽのある女の子」の年齢が半分くらいになっていたりする。色々難しい事情もあると思うんだけど、12歳と6歳では、やっぱり場の空気というものがあまりに違ってしまう。

そんなわけで、ストーリーや文章は「新現実」掲載時よりもかなり緻密になっていて、当時感じた粗っぽさというか、稚拙な感じはかなり薄まっている。ただ、その分オッサン臭さが出てしまったというか(そのオッサンというのが具体的に誰なのかは措くとして)、エンターテインメントとしての蓋然性や整合性が強調されすぎたようにも思える。

たぶんこの作家の持ち味はどことなく漂う非現実感と不安感であって、予定調和的に先が見えてしまうと緊張感が薄れてしまうのだ。売れっ子を自任するコミック編集者(註:白倉由美自身はコミック編集者ではない)がマスに理解できないものを恐れる気持ちはわからいでもないが、どのみちそんなに売れる見込みのある本じゃないし、敢えて際どいところに留まっても良かったのでは?(それとも、まさかベストセラー狙い?)

というわけで、いろいろ不満も感じるわけだけれども、それでも特に前半の切なさ攻撃は胸に迫るものがある。この際結末なんてどうでもいい。ただ喪失感に酔えばいい。

死ぬ時には姿を消す○8点

posted at 00:08:04 on 2005-11-30 by ichiro - Category:

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